放置違反金、差し押さえ報道の裏事情考察(令和288)

(初出:23/02/22)

放置違反金、差し押さえ報道の裏事情考察・・・

駐禁をとられてカッとなり、駐車監視員に手を出した男が逮捕された事件について、昨日、お伝えしました。

しかし、手を出したといっても、グーで殴るストリートファイトレベルの話ではなく、体を押し付け、相手を転ばせたぐらい。

被害にあった駐車監視員が怪我をしたとも書かれておらず、正直、この程度で逮捕され、ニュースになるというのは、すこし大げさなような気もします。

もしかすると、みせしめ報道なのかも。

”駐車監視員は「みなし公務員」なので、その作業を邪魔すると、警察官の仕事を邪魔したのと同じように、公務執行妨害で逮捕されますよ”

まだ知らない人も多い、こうした事情を一般に広め、駐車監視員の被害を減らしたい警察の思惑が、今回の記事につながった可能性もあります。

同じように、これも警察からの警告なのでは、と思わせるような報道が、昨年2022年末から続いています。

埼玉県警交通指導課は7日、車両の放置違反金滞納者33人から、65件分の違反金など合計141万7千円を一斉徴収したと発表した。
対象となったのは2013年6月~20年1月までの期間中で違反金が未納だった川口市の職業不詳の男(36)ら33人。

出典:埼玉新聞 22/12/09 「駐車違反33人、違反金を滞納…催促も無視 ついに計140万円超を一斉徴収、車や口座を差し押さえ」 https://www.saitama-np.co.jp/news/2022/12/09/03.html

駐車違反をした車の所有者が「違反金」を滞納した場合、暗号資産も差し押さえの対象にする――。埼玉県警がそんな運用を始めた。違反金の滞納が生じた場合、預貯金や車両を差し押さえるケースが大半だが、低金利が続くなか、資産を預貯金以外のものに組み替える人が増加。納付逃れの防止と公平性の担保のために差し押さえの対象に加えたという。

出典:朝日新聞デジタル 22/12/19 「駐車違反金の滞納、暗号資産も差し押さえ 投資熱を背景に 埼玉県警」 https://www.asahi.com/articles/ASQDM55LTQCRUTNB004.html

上記はどちらも埼玉県警についての記事ですが、つなげて読むと、つぎのような宣言にならないでしょうか。

”放置違反金の、逃げ得は許さない。現金がなければ、暗号資産でもなんでも、価値のあるものを差し押さえます”

なぜ警察は、そこまで、未納にこだわるのか。

理由は簡単、違法駐車確認作業には、経費がかかるからです。

駐車監視員は外部委託の民間業者で、ボランティアではありません。また、駐車監視員が確認した違法駐車車両に、放置違反金の仮納付書を配送手配などする事務局員も同様です。

そして、未納額が巨額にのぼる自治体も多い。

北海道で15回の駐車違反を繰り返し、約50万円となる放置違反金の未納があった女性に差し押さえを実施したという記事には、つぎのように記載されています。

道内の駐車違反は2022年の1年間で2万4千件を超え、違反金の未納額は約4500万円にのぼります。

出典:北海道ニュースUHB 23/02/01 「「本日差し押さえに来ました」駐車違反15回 違反金50万円を未納…”逃げ得許さない” グラスと現金等差し押さえ 道警」 https://www.uhb.jp/news/single.html?id=33315

駐禁ステッカーを貼られても、警察に出頭せず、反則金や放置違反金を踏み倒してもお咎めなしなどという認識が広まったら、駐車監視員制度を立ち上げた意味がなくなります。

さらに、今年2023年7月からは、16歳以上であれば免許不要で、電動キックボードが乗れるようになります。

この電動キックボード、時速20kmという速度制限があることから、走行するのは、自転車レーンや路側帯がメインになると予想されています。

ところが、その走路に立ちはだかるのが、駐禁車両です。

駐禁車両を避けた電動キックボードが車道中央に寄り、車と接触、事故に発展するようなケースも、じゅうぶん想定されます。

以前と比べれば減っているとはいえ、交通の邪魔となる駐禁車両。

これまでは主に、道路のスムーズな運行に支障をきたすという意味合いが強かった駐禁取締まりですが、これからは、自転車や電動キックボードの安全な通行の保持という観点から、重要視される可能性があるのです。

新型ウイルス蔓延により、一時は、ゴーストタウンのように寂れた繁華街を、ありもしない駐禁車両を探して巡回するという悪夢のような日々を送った駐車監視員ですが、風向きが変わり、電動キックボードの登場で、むしろその活動が活発になることすら、ありえます。
(参考記事:むしろ懐かしい駐禁取締り

そして、景気がよくなり、税収が上がらないかぎり、警察の予算が潤沢になることはありえないので、放置違反金の未納に対しては、よりいっそう厳しい態度で取り立てに臨むようになるのではないでしょうか・・・