架空未来「自動運転車のある生活」(その他:令和185)

(初出:21/01/20)

 はじめに、以下の話はすべて”架空の産物”であることをお断りしておきます・・・
 先日掲載した記事「自動運転車、”所有”ではなく”利用”が主流?」の内容をショートショートにしてみました。

 「ロボカーのある生活」
 
 取引先との約束の時間に遅れそうになったぼくは、道端で待機しているロボカーのドアに掌をあてた。
 ロボカー、正式にはUGVとかドライバーレスカーとかいうようだが、だれもそんな呼び方をしない。ロボカーで通っている。昔は、自動運転車といわれていたらしい。
 ロボカーでどこかに行くことは、”ロボする”で通用する。
「ちょっと、スーパーに”ロボ”してくる」という風に使う。
 電子レンジで温めてほしい時、”チンして”というようなものだ。
 ロボカーのドアに押しあてた掌はスキャンされ、ぼくのサブスク契約が確認されて、音もなくドアが開く。
 急いで車内に滑り込むと、タッチパネルとなっているフロントガラスの右下を確認した。
 そこには、ドアを開けるとき認証されたパーソナルデータから抽出した、ぼくがよく使うロボカーの行先リストが表示されている。
 リストから取引先であるA社を選ぶと、タッチした。あとは勝手に、レベル5の自動運転技術で動くロボカーが、目的地まで連れて行ってくれる。
 ぼくは持参したカバンを開けると、A社と交わす契約書の原本を取り出し、念入りにチェックを始めた。
 歴史ある会社のA社は契約を交わすとき、いまだに紙の書類を使う。
 デジタル書類は複製される可能性があるからというが、それをいったら紙だってコピーされるだろうと思うが、契約してくれるなら、アナログだろうがデジタルだろうが構わない。
 業界では、時代遅れの商慣習を守るA社は、アメリカの宗教集団の名前をとって「A社のAは、アーミッシュのAだ」と陰口を叩かれているが、そんな話をA社の担当の耳に入れるほど、ぼくは馬鹿じゃない。
 ほどなく、ロボカーはA社のまえに到着し、ロボカーが契約する有名女優の顔がフロントガラスに映し出される。
「またのご利用お待ちしております」
 愛想よくしゃべるAR画像に手を振り、契約書の入ったカバンを手に、ロボカーから降りる。空になったロボカーは、新たなお客からのコールを受信したのか、すーっと走り去った。
 ふと、道路脇に立つ、時代がかった標識が目に入った。赤い背景に青い円が重なり、真ん中を斜めに赤い線が走っている。
 いつでもどこでもロボカーが利用できるようになったこの時代、自分で車を運転する人はめっきり減った。
 かくいうぼくも、車の免許証を持っていない。
 趣味でドライブする人はいるが、数が減っているマニュアルカーの維持費は高くつくので、ぼくのような庶民には、とても手が出ない。
 だから、交通標識の意味もうろ覚えだった。
 これ、なんの標識だったっけ。
 唐突に、どこかで聞いた”駐禁”というワードが頭に浮かぶ。
 しかし、”駐禁”がなんの略か、すぐには出てこない。
 まあ、いいか。
 どうせ、ぼくには関係ない言葉だ・・・

 ※続編はこちら「続・架空未来「自動運転車のある生活」

 ・・・

 以上、レベル5の自動運転技術で動く車が普及し、多くの人が、それら自動運転車の運営会社とサブスクリプション契約している未来について、書いてみました。
 ちなみに、筆者が書いたショートショート集がkindleにて発行されています。表紙は駐禁.comイメージイラストを描き下ろしていただいた伊藤伸平先生。よろしければお読みいただければ幸いです。
ショートストーリーズ: 駐禁.comの”薄い本”
テキスト工房(kindle版)
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