(初出:20/01/16)
Appleといえばパソコン(Mac)の会社でした・・・
しかし今や、多くの人には、スマートフォン(iPhone)の会社として認識されているのではないでしょうか。
同じように、トヨタの代名詞が”車”でなくなる日がくるかもしれません。
つぎの発表が話題です。
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、2020年1月7日(火)~10日(金)に米国ネバダ州ラスベガスで開催するCES 2020において、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」のプロジェクト概要を発表しました。本プロジェクトでは、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本株式会社 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を利用して、将来的に175エーカー(約70.8万m2)の範囲において街づくりを進めるべく、2021年初頭に着工する予定です。今後、様々なパートナー企業や研究者と連携しながら、新たな街を作り上げていきます。
出典:TOYOTA 20/01/06 「トヨタ、「コネクティッド・シティ」プロジェクトをCESで発表」https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31170943.html
想定では、2000名程度の住民が暮らすというこの街は、自動運転はもちろんのこと、IoTやAIといった最新技術が導入された未来都市になるそうで、駐車禁止区域に車を停めたら、「ここは駐禁をとられます」と警告してくれるシステムもできるかもしれません。
受け入れ先となる静岡県でもすでに、県庁内に部局横断の対応チームを発足させ、同市や周辺市町と連携して全面的な協力態勢を取るとしています※。
なぜ世界的自動車メーカーであるトヨタが、車ではなく、街を作るのか。
対照的だったのは、トヨタが街づくり計画を発表したのと同じCES 2020において、ソニーが”車”を発表したこと。
ソニーが自動車のコンセプトモデル「VISION-S」を「CES 2020」で発表した。ソニーにとって初の試みとなるEVは車内エンタテインメントや自動運転などの機能が盛り込まれ、同社がもつ音響技術やセンサー技術のショーケースとなっていた。量産される計画こそないものの、ソニーがクルマのことを深く理解し、自動車分野において存在感を強めていこうという決意表明でもある。
出典:WIRED 20/01/10 「CES 2020:ソニーがつくった初めての「クルマ」から、自動車分野にかける“決意”が見えてきた」 https://wired.jp/2020/01/10/sony-concept-car-puts-entertainment-drivers-seat/
トヨタとは逆に、電機メーカーの印象の強いソニーが”車”を作る。
同じ会場で発表されたことは偶然でしょうが、世界的な企業ともなれば、一つの分野にとどまらず、新たな挑戦をしていかないと生き残れない時代であることを象徴するような出来事でした。
考えてみれば、パソコン会社のAppleは、ipodとiTunesの発売によりCD販売に依存していた音楽業界のあり方を根底から覆し、iphoneを売り出すことによって従来のガラケー市場を破壊しました。
またソニーはプレイステーションを発売してゲーム業界を席捲し、ハリウッドに進出して映画スパイダーマンをヒットさせています。
世界一であることから、あまりにも車メーカーの印象の強いトヨタも、もともとグループ内に住宅メーカーのトヨタホームを抱えており、けっして不動産に素人というわけではありません。
近未来的な街づくり事業が、トヨタの新たな顔になる可能性もあるのです。
もっともできあがった街が、関連会社の社員を住まわせて便利な暮らしを提供する、昔でいえば”お膝元”という言い方の、社員寮の延長のような街にとどまるのであれば、それほど評価されないかもしれません。
仕事が終わっても、プライベートの時間も、仕事と同じ顔触れで過ごす街・・・
口が悪い人であればむしろ、”社畜タウン”と呼ばれかねません。
新しい街には、新しい住民意識が必要な気がします・・・
※参照:静岡新聞SBS 20/01/15 「トヨタ、裾野市実証都市計画 静岡県対応チーム発足」(https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/726105.html)